大きな相乗効果を生み出す新たな産学協同研究への取り組み
未来創薬研究所は、先端科学技術研究センターと共同研究契約を締結し、従来あまり見られなかった新しい体制での研究を推進します。すなわち、アカデミアとしての研究を進めている大学の懐に、企業風土を持った研究室をまるごと持ち込むことによって、より緊密な連携を可能にし、それぞれの特長を生かした相乗効果を生み出しています。
背景:ポストゲノム研究としての抗体医薬品開発
1990年半ば以降、バイオベンチャー企業や製薬会社がすさまじい勢いで疾患関連分子の探索を展開し、この中で多くの候補分子が見出されました。しかしこの候補分子探索を通じ医薬品開発に直接に結びつく発見はほとんどありませんでした。
現在では多くの製薬企業が抗体医薬品の可能性に着目し、その研究開発に力を注いでいます。背景として3つの点をあげることができます。一点目は、抗体が疾患関連分子を医薬品・診断薬に結びつける橋渡しであるとの認識で見られるようになったことです。その高い結合活性と特異性から、抗体はもともと基礎研究分野において標的分子の同定や機能の解析に研究ツールとして用いられていました。抗体を標的分子(標的細胞)に対するデリバリーの手段として、また機能修飾の手段として、医薬品に広く応用できると考えることはとても自然な流れでした。二点目として、抗体工学技術の進展により、抗原性を低減させたヒト化抗体、ヒト抗体の作出が容易となったこと、また医薬品としての抗体の大量調製技術が確立されたことです。三点目は、抗体医薬品の市場での急激な売り上げの増加です。全世界的に医療費抑制策が進むなか、新たな成長ドライバーを探る大手製薬企業にとって今後もさらなる拡大が見込まれる抗体医薬市場はとても魅力的な成長分野として注目されています。
疾患関連分子の中で特に分泌、あるいは膜蛋白質の発見に注力して研究が進められていることは、抗体が現時点で医薬品を開発するにあたって最も成功確率の高いアプローチのひとつである、との共通の認識を反映しているものと捉えることができます。
未来創薬研究所は中外製薬での抗体創薬研究の蓄積と経験を生かして、大学内で得られた実験データをもとに新しい抗体医薬品候補の創出に注力しています。我々は、単に標的分子を探索するだけでなく、実際に標的分子に対する抗体を単離してその薬効評価を進めています。
ターゲットの発見と評価
癌治療薬、診断薬の標的分子探索を進めるために、遺伝子発現解析において、質・量ともに優れたデータベースを構築している先端科学技術研究センターと共同研究することにより、ほかでは見逃している有用分子をin silico で探索しています。具体的には、データベースの解析や文献・特許調査などを通して、疾患に関連すると思われる候補分子をリストアップし、治療や診断に有益な分子かどうかを見極める解析を進めています。
最近では発現プロファイルやゲノム配列のデータ解析を通じて疾患に関連すると思われる分子を比較的容易にリストアップすることが可能になりました。しかしリスト中の分子が本当に治療や診断の標的として有益な分子かどうかを検証する重要な作業がこの後に待ち構えています。しかし、この検証作業は地道で多くの時間を要するために敬遠されがちです。実際に論文などの研究成果の中には解析されないままリストの中に眠る事になっている候補分子が数多く見受けられます。我々未来創薬研究所ではそれらの分子の評価、解析作業を、遺伝子クローニング、タンパク発現、タンパク精製、抗体作成、薬効試験など様々な専門性を有した研究員が、小さな会社ならではの機動力を活かして、着実かつスピーディーに遂行し、抗体医薬の標的としての見極めを行っています。
癌の治療薬として抗体を考えた場合、抗体による重要な抗腫瘍メカニズムとしては抗体依存性細胞障害活性(Antibody-dependent cell mediated cytotoxicity : ADCC)、補体依存性細胞障害活性(Complement-dependent cytotoxicity : CDC)、中和活性、アポトーシス誘導活性などがあげられます。それ以外にも、生理活性物質を代替するようなアゴニスト活性を持った機能性抗体の作製や、抗体工学技術を利用した、低分子化、脱糖鎖化、トキシン結合など様々な分子改変・修飾も可能となっています。我々は、標的分子の特徴や対象疾患の性質に応じてそれぞれにフィットした治療抗体をデザインし、そこにさまざまなアイデアを盛り込むことにより医薬品開発を進め医療に貢献して行きたいと考えています。
我々の最終目標は、新規治療薬や診断薬を創薬し、医療に貢献することです。それに結びつくアイデアを一つでも多く発掘し、実現に結び付けるべく取り組んでいます。


